ひかりはたもち
ブログの順番が回ってきたものの、ブログに書くような“事件”もそうそう転がっているでなし……と思いながら、いつものように電車の中で本を読んでおりましたら、こんなことが書かれてありました。
わたくしという現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
宮沢賢治『春と修羅』の冒頭にある「現象」という語が、相対性理論でいうevent(事件・事象)を踏まえた表現だというのです。その本(竹内 薫/原田章夫『宮沢賢治・時空の旅人』1996)によると、賢治童話は相対性理論の深い理解に裏付けされているといい、実際、賢治の本棚には相対性理論の教科書があったそうです。アインシュタインが日本に向かう船の中でノーベル賞受賞の報を受け取ったその同じ年(1922年)に、『春と修羅』が書き始められたという偶然にも、興味を持ちました。
宮沢賢治といえば、私がかつて塾で理科を教えていた頃、よく引き合いに出していた童話があります。『グスコーブドリの伝記』(1932年)です(この春アニメ映画が公開されるそうですね)。自ら命を捨てて火山の噴火を促し、冷害に苦しむ農民を救うという内容。自己犠牲のテーマは法華経の影響なども指摘されていますが、火山を噴火させることで、火山ガスに多く含まれる二酸化炭素による温室効果を期待しようというわけです。冷静に考えれば、少々の二酸化炭素はすぐに拡散してしまうだろうし、噴煙による日照時間の不足、火山灰による農作物の被害も心配されます。しかし、賢治が温室効果を知っていたことには驚きます。確かに、温室効果が発見されたのは19世紀末。ただし、地球温暖化が問題視されるのは、その100年後のことでした。
さて、はじめに掲げた『春と修羅』「序」の中に、こんな一節があります。
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
学生の頃、重宝した参考書や問題集がいくつかありました。今でも、その中に出ていた語呂合わせをふと思い出したりします。しかし、それらを誰が書いたのかは1つも知りません。私も、今の子どもたちが大人になったときに、「あの参考書は使えたなあ」と思い出してくれるような教材を作っていきたいと思います。
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
2009.01.28 ばーさん