再会
一度読んだ本を読み返すことのほとんどない私。
そんな私ですが、
15年ぐらい前に読んだお気に入りの本を、
気が向いて最近読み返しました。
その本は、お札偽造の話です。
いかにして完璧な偽札をつくるか。
追う者と追われる者の駆け引きを描いた、
なかなかスリリングな小説なのですが、
お札に使われている印刷技術を詳細に説明してあり、
なかなか勉強になる本でもあるのです。
その小説の中には、現在出回っているお札と旧札を比較する場面がいくつかあります。
お札は「その国の印刷技術の全てを集結させた最高の印刷物」であり、
聖徳太子と福沢諭吉を比べれば、印刷物としての違いは一目瞭然である、というのです。
私が子どもの頃、1万円札といえば聖徳太子でした。
しかし何せ子ども。
そんな高額紙幣はほとんど手にしたことはなく、
「こんな感じだったかな」という、ぼんやりとしたイメージしか浮かびません。
そもそもお札なんてじっくり見ることはあまりないので、
現行の福沢諭吉がどんな感じだったかも、よく覚えていません。
とりあえず、諭吉はたまに財布に入っているので、観察してみました。
ほほう、素晴らしい。
ここがこうなって、あの部分がこうなってて、
なるほどなるほど……
こりゃ素人に作れるもんじゃないわ。
これが現在の日本の最高の技術か。
そうしたら次に、太子も見たくなりませんか?
でも、1万円札なんておつりでもらうものではないし、
銀行のATMからは旧札なんて出てこないし、
これはもう「聖徳太子の1万円札をください」と誰かに言うしかないです。
ダメもとで家族や友人たちに声をかけてみたものの、やっぱり持っている者はなく、
半ばあきらめかけていました。
が、その時!!!!
飲みに行った先でのおつりの中に、
夏目漱石がーーーー!!!
「えへへ、懐かしいでしょ?今でもちゃんと使えますよ」
と言う店主の手から奪い取りました。
そうや、何も1万円札じゃなくてもいいんや!
比べてみると、確かに全然ちがいます。
使われている色の数や線の複雑さなど、
素人が見てもわかるほどの差がありました。
それにしても、久しぶりの漱石との再会。
しかも、このタイミングで手に入るとは。
普段ならすぐに使ってしまうところですが、
しばらく大切にとっておこうと思う、ねえさんでした。