短歌のやつ
大学1回生のとき,近所のローソンでバイトしていました。
21:45から6:00までの深夜勤務です。
バイトの先輩に中村さんという人がいました。
大学4回生ですが1浪1留しており,5つ上。見た目はほぼ小山田圭吾。
バイト歴は結構長かったのですが,就職活動があるからということで週1回,日曜日のみの勤務です。うちのローソンではからあげクンなどを調理する油を週に2回(木・日)交換しており,日曜日の油の交換のときにはフライヤーをピカピカに磨くというミッションが課せられておりました。そして日曜日勤務の中村さんがそのミッションを担当していたため,「油主任(あぶらしゅにん)」とよばれていました。
なんとなく勢いで書きましたが,「油主任」のくだりは別に意味はなく,声に出して読むとちょっと気持ちがいいことだけお伝えしておきます。
中村さんとはバイト終わりに中村さんの家でぷよぷよをしたり,カラオケに行ったり,パチンコに行ったりと,わりと仲良くさせてもらっていました。
ある日,中村さんに誘われました。
「今日の晩ひま?飲みに行こうや」
「いいですよ」
「それでこれから大学の授業が1つだけあるねんけど,昼飯おごるから一緒に行かへん?からあげ定食がうまい店があんねん」
「からあげ定食,いいですね。じゃあ付き合いますよ。でも部外者が授業とか受けてもいいんですかね?」
「大丈夫大丈夫。うちマンモス校やで。絶対バレへんって」
少し近畿大学の雰囲気にも興味があったので,授業は面倒でしたがまぁ飽きたら寝てればいいかと思い,OKしました。
からあげ定食はおいしかったです。
そしてそのまま一緒に教室に入りました。
あれ,結構せまい教室でやるんだなーって思ってたらすぐに教授が入ってきて授業が始まりました。
嘘でしょ。まさかの超少人数授業。
1対8ぐらい。
すごい怪訝な表情で教授がこっち見てくるんですが,中村さん?
普通こういうの誘うときって大部屋の授業とかじゃない?
そしてギリギリに着いたからど真ん中の席しか空いてないじゃないですか。
周りのこいつ誰?っていう雰囲気も気になるんですが。
バカなんですか?
てか,7月にも関わらず,この少人数で誰からも話しかけられてないけど,おめーこの授業ほとんど出席してないな。
横目でヘルプを出してるのに,こっちを一切見なくなった中村さん。
そうだった。この人はこういうところがあった。
ぷよぷよで負けが込んできたら,もう寝るから帰ってと言ったり,一緒にパチンコに行っても,自分だけ当たらなかったら先に帰るわって本当に帰ったり。
中村さんはあてにならないことがわかったので,自衛のために「は?私ずっとこの授業受けてましたけど何か?」っていうスタイルでいくことにしました。何らかの短歌の授業でした。1mmも興味がなかったので内容は覚えていません。
ただ,教授の話に大げさにうなづいたり,小声でなるほど~って言いながらメモをとるふりをしてたら,ちょっと教授も気持ちよくなってきたみたいで,最後の方は僕の方見ながらずっと授業してました。僕の名前を知ってたら多分途中で当てられてた。
授業終わりのチャイムが鳴って,お昼休みの青森さん(国語チーム)ぐらいの早さで片付けて,何か言いたげな教授に笑顔で会釈しながら教室を出ると,追いかけてきた中村さんに
「な。バレへんかったやろ?」って言われました。
このとき,世界から戦争がなくならない理由がわかった気がしました。
そんな中村さんとは,就職先の寮から夜逃げするのを手伝ってから会えていないけれど,お元気ですか?もしこれを見てたら連絡ください。
ちゃりこ